2014年03月26日 18:21
高橋是清財政を学びデフレ脱却・経済復活のヒントにせよ
アベノミクスに暗雲が立ちこめている。株価も下降気味、成長率に陰りが見え始めた。内閣府から昨年10-12月期の実質GDPは年率換算で0.7%に下方修正された。結局最近の成長率(%)は
2012/ 1- 3. 3.5
4- 6. -1.7
7- 9. -3.2
10-12. 0.1
2013/ 1- 3. 4.5
4- 6. 4.1
7- 9. 0.9
10-12. 0.7
となった。なんとこの中で2013年の1-3と4-6期のデータだけを見て景気はよくなったとして消費増税を決めてしまった。GDPデフレーターはまだマイナスだからデフレは続いている。これで景気回復とは、まさに大本営発表だ。消費増税まであと1ヶ月を切った。ここで景気が腰折れしたら、次の手は考えられているのだろうか。今こそ、高橋是清財政を学び、しっかりと経済立て直しの戦略を考えて頂きたい。
昭和恐慌でデフレに陥った後に行った高橋是清蔵相の積極財政政策とアベノミクスとは似たところと違うところがある。両方共円安・株高では共通しているが、高橋財政では円安で輸出が大きく伸び景気拡大に貢献しているが、アベノミクスでは輸出が伸びていない。これは企業の海外移転が進んでしまったことに原因がある。その効果だが、高橋財政は即座に劇的な効果があった。例えば消費者物価は前年は-11.5%だったものが、+1.1%に、その翌年には+3.1%までに改善している。一方でアベノミクスでは改善幅はその足下にも及ばない。この差の一つには高橋財政では急激に円安が進んだことと大規模な財政出動があり、しかもそれが数年に渡って継続したことも良い結果をもたらした。
大きく違うのは日銀による国債への対応だ。高橋財政では政府発行の国債の8割以上を日銀が引き受けたのだが、インフレが進み過ぎるのを恐れ、日銀は引き受けた国債の9割を市場で売却している。一方でアベノミクスは大量の国債を一方的に買っているだけだ。この違いは次のように説明できる。高橋財政では、思い切った金融財政政策によって、直ちにデフレ脱却に成功し、その後は出口戦略(日銀の売りオペ)も行いながら政策を実行できたということだ。他方アベノミクスでは、いかにも政策が小粒で、デフレ脱却には気が遠くなるほど時間が掛かりそうだ。出口戦略どころではない。長期戦になればなるほど傷口を広げてしまうことには注意が必要だ。
高橋財政では、結果的に戦後のハーパーインフレを招いた。日銀の国債引き受けを一旦認めれば、政府の財政拡大が果てしなく続きいつかはハイパーインフレを招くという議論がある。
しかし、ここで起こったことは全く違う事情であり、現在の日本にはあてはまらない。当時は日清・日露・第一次世界大戦と3回連続で戦争に勝利しており、占領地を広げつつあった。欧米諸国(特に大英帝国・アメリカ合衆国)の植民地支配から東アジア・東南アジアを解放し、東アジア・東南アジアに日本を盟主とする共存共栄の新たな国際秩序を建設しようという大東亜共栄圏構想があった。1937年に日中戦争、1939年からは第二次世界大戦が始まり「欲しがりません勝つまでは」というスローガンの下で、国民合意の上で国民生活を一時的に犠牲にしても軍事中心の財政政策を行うことになったのであり財政拡大に国民の支持があった。現在の日本はこれとは正反対だ。平和憲法を持ち、戦争を強く拒否する人ばかりである。高橋是清財政とアベノミクスを比較するには、この環境の大きな変化を無視すべきでない。日銀に国債を購入させ政府が財政規模を拡大してしまうと、高橋是清の2・26事件のように財務大臣が暗殺され、その後は自衛隊が暴走し、自衛隊主導で戦争に突入すると予想する人はどこにもいないだろう。安倍首相と黒田日銀総裁、そしてそのブレーンの方々の英知があれば、必ずやデフレデフレ脱却、経済復活、そして過度なインフレの防止は可能だ。今こそ思い切った財政政策の決断の時である。