2014年04月13日 21:17
高度成長期には減税をしても税収は増え続けた
1960年、池田内閣は所得倍増計画を打ち立てた。10年で、すなわち1970年までに名目国民所得を2倍の26兆円にしようというものだ。そんなものできるわけないと批判も出たが、しっかりしたシミュレーションの裏付けのある経済政策を断行した結果、実際は2倍どころか約3.5倍にもなった。国民の懐を暖め、国民に、そんなに多くのお金を渡したわけだ。一体誰が、一気にそれだけのお金を刷ったのだろうか。政府貨幣発行か、それとも日銀の国債引受かと思うかもしれない。当時、政府はそんなことをする必要は全く無かった。当初は赤字国債の発行すら必要が無かったのだ。赤字国債を発行し始めたのは景気が悪化した1965年からで、発行額もごく僅かだった。
ではどうやってお金が増えていったのだろうか。答えは産業の発達に伴う資金需要にある。日本人が優秀で、製造業が国際競争に勝ったことが根底にある。例えば自動車生産においても、ほぼゼロから始め、僅か20年で米国を生産台数で追い越すという快挙を成し遂げた。その他の製造業でも他を寄せ付けない発展をした。そこには企業努力があった。安くて高性能の製品を作れば売れるし、売れれば新たな投資をする。その投資に銀行・日銀は積極的に協力した。最初は日銀がお金を刷り、それを銀行を通じて企業が借りた。景気がよくなれば地価も上がり、担保価値も上がり、融資を受けやすくなった。投資が投資を呼ぶ好循環が続き、みるみる国民所得は増大した。税収も毎年10~20%伸びていたから、歳出も同様に拡大でき、経済発展に貢献した。
そんなに税収が伸びたということは毎年増税をやっていたのだろうか。いや逆だ。毎年減税をやっていたのに、税収は伸びた。我々が学生時代の頃、新聞やテレビでいつも減税のニュースをやっていた。そんなに減税をやれば、そのうち税金はタダになるのではないかと錯覚するほどだった。こんな話を今の政治家にしても信じてくれない。彼らは、税収を増やすには増税しかないと思っている。
ブラケットクリープという言葉がある。これは国民の所得が増えれば、所得税収が増えるというもの。所得税は累進課税となっており、所得が増えれば高所得者のランクに移行するので税率が上がり、実質的に全体として増税になるというものだ。国民所得が2倍、3倍になれば、税率を見直さねば、とんでもない増税になってしまうことは理解できるだろう。そうならないように、例えば所得税減税を毎年行っていて、基礎控除は1961年が9万円、62年9.75万円、63年11万円、64年12万円というように以降毎年1万円ずつ基礎控除を上げて減税をしていた。配偶者控除も同様だ。経済が拡大基調であれば、毎年減税できるし、それでも税収は毎年10%~20%増える。赤字国債も発行する必要は無い。今から考えれば夢のような財政運営だ。
確かに、高度経済成長期の再現は無理だ。しかし、環境さえ整えば、日本人は優秀だから国際競争に勝てるし増税なくして税収を増やすこともできる。最も重要なのは歳出を増やすことだ。国の借金は日銀が買い取ればよいのだから気にしなくて良い。島倉原氏は数十カ国のデータを調べて、歳出の増加率はほぼ名目経済成長率に等しいことを示した。
結論は簡単だ。国債を増発し、歳出を大幅に増やせばよい。増税などなくても税収は増える。国内の需要が出てくれば、企業は投資を始め、優秀な日本人は必ず国際競争に勝ち、日本経済が復活する。