2014年05月03日 09:56
安い外国人労働力を入れれば賃金は下がりデフレは悪化する
安倍首相は4月4日、「外国人材の活用の仕組みを検討していただきたい」と指示した。6月の成長戦略に盛り込む方針だそう。なぜ、外国人なのかと言えば労賃が安いことに尽きる。今、例えば事務員を募集すれば、びっくりするほどの応募がある。人は余っている。ではなぜ建築・土木・介護の分野では人が集まらないのか。
かつて3Kと言われた。きつい、汚い、危険な職場だが、外国人を入れればよいという問題ではない。戦前に炭鉱労働者として朝鮮人や中国人を入れ働かせていたが、戦後彼らは一斉に引き上げたために経済は大打撃を被ったことを忘れてはならない。建築・土木・介護の分野でも、日本人でも働けるような職場にして行くのがよい。
建築・土木の業者が大規模設備投資を躊躇する理由は、東日本大震災からの復興需要も政府の景気対策も一時的だと考えているからだ。自民党の国土強靱化政策は10年間200兆円だったはずだ。国土強靱化に限らず、必要な公共事業はあるはずで、10年計画で予算化すれば、必ず業者は戻ってくる。かつて公共工事は悪者扱いにされ、業者の撤退が相次いだ。このトラウマを消すには、余程しっかりした長期計画が必要である。それに加えて大規模化、IT化、ロボット化を進めて生産性を上げ、人手を多く必要としない工夫が必要で、政府もそれを強力に援助すべきだ。
また介護の現場も同様だ。介護福祉士になりたい人は沢山いるが人が集まらないのは低賃金で、重労働だからだ。介護福祉士の平均年収は、資格手当や、夜勤手当を含めて男性で315万円、女性で281万円となっており、一般の労働者より低い。腰を痛めることも多く重労働だ。人手不足は給料を上げれば解消するから外国人労働者はいらない。他の分野から労働力が移動してくれば、他分野の労働者のだぶつきが軽減され、他分野での賃金上昇の圧力を掛けることができるから、賃金を上げたい安倍首相には最適な政策だろう。更に介護ロボットを大量に導入すれば、介護福祉士が腰を痛めることもなくなるだろう。開発された介護ロボットは輸出できるから貿易赤字の解消にも貢献する。介護ロボットの開発も国が援助すべきだ。
安倍首相が最も心配しているのは財源がないことだろう。しかし、日銀がぐるぐる輪転機を回して刷ったお金(実際には刷らず、コンピュータ内の数字を書き換えただけだが)がたくさんある。4月3日現在で通貨供給量は218兆円、日銀当座預金は127兆円もある。お金は刷っただけで使わなければ何にもならない。どうやって使うのか。政府が国債を増発し、金融機関に買ってもらって資金を得る。その資金で財政支出を拡大すればよい。日銀当座預金に127兆円も眠っているのだから、国債購入資金としては有り余るほどあるし、しかも将来必要となればいくらでも刷り増すことができる。
インフレになることを心配する人がいるかもしれないが、インフレにすることが政府の目標だったはずだ。インフレにしてデフレ脱却すれば、やっと他の国と対等の条件で経済発展ができるし、国の借金もインフレでどんどん目減りする。1000兆円の借金も2%のインフレで毎年20兆円も目減りし続ける。どんなに増税しても20兆円も減らすことは絶対に無理であることを知っておくべきだ。
給料が上がれば国民全体が豊かになる。年金も連動して上げると良い。安倍首相は物価を上げることを推奨しているため、今回の消費増税で便乗値上げが相当出そうだという東大の渡辺教授の記事が4月5日の朝日新聞に載っている。便乗値上げは貧困層の生活を苦しくする。物価より賃金をまず上げることが先だ。そのためには財政支出を拡大し、様々な施策を強力に遂行していくべきである。