2014年06月01日 13:15
5月10日のテレビBS朝日の番組は「借金8000兆円超に!? どうなるニッポンの経済・財政 竹中平蔵元大臣vs元財務官僚 徹底討論!」というタイトルで討論をやっていた。BS朝日に言わせると、いまの日本の大問題は、「財務省の審議会の推計によると、日本の借金は、いまの政府の健全化目標を達成した場合でも、2060年に8000兆円を超えるという」ことだそうだ。この論文については前回説明した。小泉政権で大臣を歴任した竹中平蔵・慶応大学教授と元財務官僚の小黒一正・法政大学准教授に2~3名が加わって、討論を行っていた。
最初から最後まで言っていることが、余りにも的外れなので唖然としてしまった。そもそもここでネタになっている財務省の審議会の推計だが、元々の論文には、様々な仮定が置かれており、その中のシナリオの一つに2060年に8000兆円の借金という数字が無くも無いのだが、この審議会が借金8000兆円超を予測し警鐘を与えているわけではない。詳しくは次のサイトを読んで頂きたい。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-b994.html
8000兆円の借金を日本人は怯えて暮らさなければならないのだろうか。別な見方をすれば、この借金は日本人が貸すのだかから、2060年には8000兆円ものカネを政府に貸すだけの余裕ができるという事だからむしろ希望を持つべきだ。赤ちゃんから老人まで1人当たり8000万円ものカネを政府に貸すことができるようになるという夢のような世界だ。5人家族なら4億円だ。そんなカネがあれば、別な目的に使うよと思うだろう。その通りだ。
この審議会のメンバーに聞いてみるが良い。そんなカネを国民が政府に貸す事などあり得ないと口を揃えて言うだろう。だから実際はその前に財政破綻するんだと番組の出演者は言う。だが、破綻とは一体何を意味するのか誰も説明できない。会社の破綻なら、社員全員が職を失うが、国が破綻すると国民全員が職を失うだろうか。そんなことになる前に、国の借金を日銀が買い取ればよいだけではないか。実際、黒田日銀総裁の金融緩和ではそうしている。かつて筆者が、日銀はもっと国債を買うべきだと言うと、けたたましい声で怒鳴りつけられたものだ。「そんなことをすればハーパーインフレになる!円の信認が失われ円が紙くずになる!」と犬を蹴散らすような態度だった。しかし、実際日銀による国債の大量購入が始まった現在、円安・株高で明かにメリットはあったものの、ハイパーインフレどころか、デフレ脱却すらおぼつかない。円が紙くずになるどころか、1ドル101円にまでになっただけだ。国の借金はいつでも日銀が買い取ることができるのに、破綻などするわけがない。
竹中平蔵氏は自分が大臣だった頃、財政は大きく改善したことを自慢していた。しかしこの間、国の借金は大きく増加した。更に悪いことに、1人当たりの名目GDPの国際順位だが、彼が就任した2001年には、5位だったのに最後の年の2006年にはなんと18位まで下がってしまった。つまり、経済政策の失敗のために諸外国に抜き去られてしまい、一気に貧乏になったということだ。世界経済は30年に1度と言われるほどの好景気に沸いていたのに、日本だけは賃金は下がり続け、デフレが続いていた。銀行貸出残高は2001年には約440兆円だったものが、2006年には380兆円に落ち込んだ。もともと3%から5%への消費増税の前には530兆円あったから150兆円も減って日本経済停滞の元になった。
竹中氏の経済政策には自慢できる成果など無かった。しかしこういう討論会には、彼を批判する論客を彼は出させない。そういう論客が来るなら俺は出演しないと竹中氏は脅す。それが彼の手口だ。視聴率を上げるために、各局竹中氏を出演させようとする。そうすると竹中氏を批判する者は一切同席させることはできない。かくして、恐ろしく偏向した番組が出来上がってしまい、国民は竹中氏の間違えた考えに洗脳されてしまう。これが失われた20年の一因になったと言っても言い過ぎでは無い。